2022年の活動ふりかえり

2022年の活動を振り返ります。
野口晃菜 2022.12.31
誰でも

2022年は二つも大きな出来事があった。

一つ目は3月末に10年勤めた会社を退職したこと。二つ目は妊娠をしたこと。

妊娠してから初めて自分の身体が自分でコントロールできない感覚を経験。以前「子どもを産みたくない理由」という文章を書いた私がなぜ子どもを産もうと思ったのか、そして妊娠後の変化についてはまた別途書こうと思う。

今日は2022年の活動を備忘録的に記録しておく。やったことを羅列するだけですがめちゃくちゃ長いです...

1.学校・こども園への継続的な助言・コンサルテーション(5機関)

今年は4つの小学校、1つのこども園に継続的に関わった。

3つの小学校ではスクールワイドPBSの導入コンサル。そのうち一つの学校では新たにResponse to Intervention(RTI)の取り組みも開始。内容としては校内研修の講師、定期的な助言、研究協議会の講師、RTIミーティングのファシリテーションなど。1つの学校は3年目、2つの学校は2年目。これらの3つの学校はだいたい2-3か月に1回訪問、もしくはオンラインで助言などをした。PBSやRTIの詳細については以下を参照。

もう1つの学校では知的障害のある子どもを対象とした通級による指導のモデル事業の助言。こちらも2年目。主な内容は校内研修、通級担当教員への助言、通常の学級担任教員への助言。この学校は月に1~2回訪問かオンライン。

4つの小学校すべてにおいて、通常の学級そのものをいかにインクルーシブにしていくための仕組みづくりや、先生方との共通認識づくりに継続的にかかわることができて、毎回学校に行く度に私がエンパワーされた。

①通常の学級でできるユニバーサルな支援(第1層支援)はなにか、②通常の学級でできるプラスアルファの支援(第2層・第3層支援)はなにか、③通常の学級ではない場でやれたほうがよい支援・指導はなのか、の3つのポイントを先生方と共有し、学校全体で推進することができた。

例えばある学校では指導案に「インクルーシブな工夫」の項目をつくることが先生方から提案なされ、「多様な子どもがいること」を踏まえた授業設計がなされた。RTIを導入した学校では、学期に1回、学年ごとにRTIミーティングを実施し、子どもの定量的・定性的なデータを眺めながら、①の第1層支援が果たして有効だったかの振り返り、②の+アルファの支援としてなにができるかを共に検討し、計画に落とし込んだ。

インクルーシブ教育のためには、このように先生方が日々の授業実践を振り返る機会をつくり、うまくいったこと、うまくいかなかったことを言語化し、うまくいかなかったことについて次はどうするか?をチームとして検討する仕組みが必要だと改めて実感した。また、通級や特別支援学級の先生と通常の学級の先生が柔軟に通常の学級と特別な場を行き来できる仕組み。やはり物理的に時間を共に過ごすことが大切。それぞれの専門性や知恵を結集して、どうしたら多様な子どもたちのニーズにこたえられるか?を共に検討する。

これらの実践についてはまた論文や学会発表やイベントなど、来年度どこかで報告の機会を持ちたい。

まだまだコロナ禍の中、先生方は本当に前向きに素晴らしい実践をどんどんされていて、毎回感激をする。私がやれていることは本当にほんの少しで、先生方の実践を言語化して多くの人に知ってもらう役割を担いたい。

2. 教育委員会・学校など教育関係者への単発講演・研修(11回)

こちらは主に単発でお受けした、教育委員会や学校教育関係者向けの講演や研修。内容はインクルーシブ教育の定義の確認や具体的な実践の紹介が多かった。

1月~3月は会社で受けた仕事なので記録がないが、4月以降の講演・研修は以下の通り。個々の自治体名はオープンになっていないものは伏せて、主催者と対象者のみ記載。

・教育委員会主催の全校の特別支援教育コーディネーター・生徒指導担当を対象とした研修

・人権教育研究会主催の全校の教職員を対象とした研修

・教育センター主催、希望する全校の教職員を対象としたペアレントトレーニングファシリテーター養成研修

・教育委員会主催、希望する全校の教職員(主にコーディネーター、支援学級・通級担当)を対象とした研修

・小学校でのPTA主催の教職員と保護者を対象とした講演

・教育・学びの未来を創造するプラットフォームin戸田での講演(2回)

・小学校での校内研修

・教育委員会主催の都道府県全校の教職員を対象とした人権教育研修

・都道府県全校の特別支援教育コーディネーターを対象とした研修

・都道府県の人権教育研究会の全校の教職員を対象とした人権教育研修

振り返ると、都道府県や市区町村の教育委員会主催の研修が多かったのと、人権教育関係の研修が多かった。来年も人権教育関係の研修依頼はすでにいくつかいただいている。

※お仕事のご依頼は akinaln831★gmail.com まで(★を@に変換)

3. 省庁・自治体の委員(4つ)

国の委員と自治体の委員、それぞれを担うことで、インクルーシブな教育を実現する上で、国としての役割はなにか、自治体としての役割はなにか、などを考えて学ぶ機会にもなって非常に良い経験だった。産業構造審議会はすでにとりまとめが出ていて、文科省の方は今年度中にとりまとめがなされるの予定。国連の勧告も踏まえて、かなりいろいろと提言した。以下のサイトから議事録に飛べるので、そちらからぜひご覧ください!大阪府箕面市はこれまで「共に学び、共に育つ」教育を実践してきた自治体。視察にも行かせてもらい、意見交換もたくさんして、こちらもとても良い経験ができた。

・経済産業省「産業構造審議会  教育イノベーション小委員会」 

・文部科学省「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議」

・箕面市「支援教育充実検討委員会」

・東京都「第12期生涯学習審議会」

4. 大学での教職課程「特別支援教育概論」(8コマ)、他大学での講義(4回)

今年も国士館で教職の必修科目を合計650名くらい?に教えつつ、他の大学でもゲスト講師として講義をした。

・国士館大学での非常勤講師「特別支援教育概論」担当 春期3コマ、秋期5コマ。

・近畿大学、広島大学(英語)、都留文科大学(英語)、兵庫教育大学にて講義

5.インクルージョン研究会あぜみ(月2回)

月2回のオンラインゼミ。今年は以下のテーマ。出産に伴い一旦閉鎖するが、またどこかのタイミングで一人で運営するのではなく、運営メンバーを集めて、また再開したい!みなさんと一緒に「誰の言葉にも同じだけ価値がある」場、そしてもやもやを共有できる場をつくることができて、私にとってとても大切な居場所だった。

・座談会「インクルーシブ教育を取り巻く人々が置かれている環境」

・野口の取り組み紹介(経産省委員)

・荒木寿友さんゲスト「人権教育×道徳教育」

・あぜみでの情報保障の紹介

・川端舞さんゲスト「権利としてのインクルーシブ教育―例外的な統合教育は能力主義を強化する―」

・座談会「多職種連携」

・野口の取り組み紹介#2(新しい活動紹介)

・楠見友輔さんゲスト「ハイブリッドな私たちー子どもの学習を問い直す」

・インクルーシブ教育実践推進校(神奈川県)の取り組み紹介

・株式会社ばりこねっとゲスト「罪に問われた障害のある方への支援」

・座談会「周りの環境や意識をどう変えるか」

・座談会「やまゆり園事件を振り返る」

・野口の取り組み紹介#3(自治体との連携紹介)

・座談会「当事者研究の実践紹介」

・「SNSにおける誹謗中傷」

・あぜみ発書籍!裏話

・座談会「マイノリティが傷つかない接し方」

・座談会「部落差別について」

6.番組監修(1つ)

NHKEテレ番組「でこぼこポン!」のドラマ監修。

4月からレギュラー化した番組。主に発達障害のある子どもを対象とした、日常生活の困りごとを楽しく解決する番組。以下のサイトでオンデマンドですべて見れるので、ぜひ!

7.執筆した書籍や記事、そのほかインタビュー記事など

【書籍】(1冊)

インクルージョン研究会あぜみのメンバーを中心とした、多様な立場26名で書いた書籍。多くの方々にお読みいただき重版も決定。「誰のことばにも同じだけ価値がある」というメッセージを多くの方が受け取っていただき、うれしい。

現在もう2冊編著者として書籍をつくっている。来年の春には出版できるかな?こちらも2冊も当事者のみなさんと共につくっている本。乞うご期待。

【記事】(1つ)

今年執筆したYahoo記事はこちらのみ。インクルーシブ教育に関する国連の勧告が出て、「これは急いで書かねば!」と急いで書いた。こちらも多くの方々に読んでいただいた。

【インタビューやコメントをした記事】(7記事)

教育新聞さんにて3回連続の記事。

カラふるさんにて、なぜインクルーシブ教育について関心を持ったか?自分の経験や今の活動のインタビュー記事。こちらも三回連続。

こちらはコメントした記事。

8.少年院へのアウトリーチ支援、少年院・刑務所を退所した障害のある方への支援

数年前からのこちらの取り組み。前職の業務委託としてアウトリーチ支援や出口支援を月2-3回しつつ、別の法人(株式会社ばりこねっと)でのイベント運営などをサポート。直近はこちらのイベントを開催(私は裏方)。

9.学校以外の講演・メディア出演・学会発表など

【学校以外での講演】13回

・大田TSネット主催セミナーにて講演

・6回DPIインクルーシブ教育推進フォーラムでの講演「世界のインクルーシブ教育の流れを地域へ!―現状と課題を考えるー」

・Beyond Conferenceでの講演

・人権教育啓発センター講演

・よこはま発達相談室主催オンラインサロン登壇

・ベネッセこども基金・ダイアローグインダイバーシティとのイベントファシリテーター

・島根県津和野町にて講演

・東京大学生産技術研究所主催、UNIVA共催イベント「「もしかする価値観」との出会い-STEAMとD&I から広がる地平線-」登壇

・日本公認心理師ネットワーク主催セミナー登壇

こちらの資料は以下から購入可能。

・発達障害啓発フォーラム登壇

以下のYoutubeから視聴可能(無料)。

・上尾市主催発達障害のある子どもとの関わり方講座登壇(2回)

・たこの木クラブ連続講座登壇

【学会登壇】6回

・日本ミュージアム・マネージメント学会での講演

・日本犯罪心理学会でのシンポジウム企画・登壇「障害のある矯正施設退所者の出所後の地域移行支援の在り方を考える―精神疾患のあるAさんを中心とした司法・福祉・医療の連携実践から―」

・日本認知行動療法学会でのラウンドテーブル登壇「ダイバーシティへの障壁:マイクロアグレッションについて考える」

・日本LD学会 ラウンドテーブル司会

・日本認知療法・行動療法学会でのシンポジウム登壇「市民・当事者・各種専門家が共創し、インクルーシブな支援を実現する」

・日本認知療法・行動療法学会でのワークショップ企画登壇「ダイバーシティ・インクルージョンと対人援助職」

心理学系の学会登壇が多かった。教育分野だけでどうにかなることではないので、このように近接分野でお話する機会をいただくことは大変ありがたい。

【メディア出演】3回

どうしても関心のある人向けにしか発信ができないところ、このような機会をいただくことによって関心のない、たまたま聞いていた人にもリーチする機会をいただいた。

・小島慶子さんAudibleポッドキャストへの出演

・静岡SBSラジオ出演

・Abemaプライム出演

10. 学術団体の理事や委員としての活動(2団体)

・日本ポジティブ行動支援ネットワークの理事としての活動

・日本LD学会国際委員としての活動

11.新しい活動の準備

一般社団法人UNIVAを立ち上げ、こちらでの本格的な活動開始に向けた準備を諸々実施。

これまでの活動は、既存のマジョリティ中心の構造からこぼれ落ちざるを得なかったマイノリティを支援するための活動がメインだったが、UNIVAではインクルーシブな社会に向けてマジョリティが変わる機会を提供する活動をしていく予定。とても難しいことだけれど、残りの人生かけてチャレンジしたい。今は様々なリサーチをしているところ。今年読んだ書籍や文献・参考にしたサイトなどをいくつか紹介。

すっかり長くなってしまった....カレンダーなどを見直しながら書いたけれど、抜け漏れありそう...

どの活動内容も、一貫したテーマはこれまでよりもさらに踏み込んでインクルーシブな社会のために、社会の構造をどう変えるか?そのためにマジョリティの人たちにどう働きかけられるか?来年以降もこのテーマで変わらず活動をしていく。

前職でも自分のやりたいことができる環境にはあったけれど、やはり組織の看板を背負っているのはなかなか重くてしんどかったんだなあ、と辞めてから改めて思う。今年はかなり自分のペースで自分の納得のいく活動の仕方ができたと思う。つわり中はなかなかしんどかったけれど。

来年は仕事をいくつか絞り、UNIVAとしての活動を本格開始する予定。子育ても始まるので、ゆるゆる働きたい、といいつつ、おそらく今年のようによく動くのだと思う。けれど、「ちゃんと働かなきゃならない」という呪いは解けていて、本当に遊ぶように働いている。家族や一緒に活動している人たちのおかげで本当に気持ちよく働いている。ありがたい。

年明けすぐに家族が増える。楽しく暮らしながら、引き続き楽しく働きたい。

今年一緒に活動したみなさま、いつも見守ってくれているみなさま、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします!

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